日本でのスペインのイメージは南国。とても暖かい国という印象が闘牛・フラメンコと同じように、相変わらず強いようです。勿論、白い街並みのスペインも素敵なのですが、実はとてもバラエティに富んでいる国なので、北から南に文化的背景も大変違う国が幾つか一緒になって構成されているのがスペインという国だと考えてもらった方がいいと思います。地域によっては、年間300日以上も雨が降る所がありますから、景色はまるでスイスのようにグリーン。グリーンスペインとも呼ばれています。
これだけ文化が違うとレシピも多彩。それがスペイン料理最大の魅力だと思います。
私のスペインファミリーは北部出身者が多いので、今回は北部のレシピもかなり重視しました。北部では夏、アジサイが満開になりますし、アジサイ自慢のコンクールなどもあり、アジサイがなかったら何を咲かせていたのだろうと思うくらいアジサイが一杯。冬は椿ですが、私はどちらかというと椿ファン。ガリシア地方の椿は実に見事です。
これはアストゥリアスの名物料理であるインゲン豆のスープ。ファーベスFabesと呼ばれるスペインから南米に渡り、またスペインに戻ってきたと伝えられているインゲン豆を使います。なぜアストゥリアスの名物かというと、この豆は気候の関係でアストゥリアスにしか育ちません。同じインゲン豆でもランクがあり、最高級に位置するいんげんまめはこれ!皮を壊さず煮るのが難しいのですが、お米の固さと同じように、料理人は皮の様子を重視します。最も有名なファーベスは、ハムはチョリソ、モルシーリャなどを入れたカロリーたっぷりのものですが、私はあえて日本でも復元しやすいようにアサリのファーベスを調理しました。勿論、豆はスペインから持参しました。
これはパートナーのお父さん秘伝のレシピ。彼は肉の方を好んで料理していましたが、私は日本人にはこのアサリのスタイルがばっちり合うと思います。早速撮影の後、この料理は少し自宅に持ち帰り母に味見をしてもらいました。案の定、とても好評で、皮を壊さずに煮ているところも褒めてもらえました。これは継続して日本の我が家でも定番にしたい料理です。