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ダ・ヴィンチのペーパーオルガン Organo de papel de Leonardo da Vinci
今日は、音楽家レオナルド・ダ・ヴィンチのお話です。
このプロジェクトは7年も前に完了したものなのですが、現在実施しても全く変わらず興味深いものなのでお話します。

Codice Madrid Biblioteca Nacional de Madrid
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ダ・ヴィンチは生前、画家として有名になる以前に優れた音楽家として評価されていました。ミラノのスフォルツァ家の宮廷に入るためのレターにも、自らのことを優れたミュージシャンとしてアピールしているくらいです。そんなダ・ヴィンチの実像は歴史の闇に消えてしまうわけですが、彼は膨大な量の手稿を残したことでも有名な天才。世界各地に分散した手稿がありますが、ダ・ヴィンチの死後、皇帝カルロス5世やフェリペ2世の専属彫刻家であったポンペオ・レオーニPompeo Leoniが、ダ・ヴィンチの弟子から大部分の手稿を買い取り、スペインに持ち込んでいます。手稿は分割され結局あるセビリャのある宗教家に買い取られ、最終的にはフェリペ4世に寄贈されます。その後、この手稿は有名な”Codex Madrid”になるのですが、エル・エスコリアル修道院のロイヤルコレクションである図書館の中で単なる本として埋もれ、20世紀も1960年代になるまで、全くその存在さえも忘れられていたのです。

話が長くなってしまうので短縮しますが、エル・エスコリアルの図書館から国立図書館内へ写った手稿は、当時の無能な学芸員に、中世の楽譜として分類され、カリフォルニアから中世音楽の研究に来た研究者が発見するまで、誰もダ・ヴィンチの手稿がマドリードにあるなんて想像もしていなかったのです。(この発見エピソードも面白いのですが、長くなるのでまたいつか)

1枚目の写真が、そのコーデックスマドリードの中の1ページで、ダ・ヴィンチ考案のペーパーオルガンが描かれているページです。ダ・ヴィンチが考案した楽器は他にも沢山あるのですが、私たちのプロジェクトの主人公は、このペーパーオルガンなので、この楽器にフォーカスを当てます。

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2枚目の写真が、ペーパーオルガンの姿と、その復元者Joaquin Sauraホワキン・サウラ氏の様子です。サウラ氏は、非常に優れた歴史あるパイプオルガンの修復家。聖女テレサのRealejoレアレホというポータブルタイプのオルガンの修復もしているくらいの腕の持ち主。スペイン中の優れたパイプオルガンは、有名なピアニストAntonio Bacieroアントニオ・バシエロ氏と見学したそうです。あまり知られていませんが、スペインは世界一のパイプオルガン保有国でもあり、それがほとんどすべて歴史あるものなのです。

そんなサウラ氏、友人宅で偶然この手稿のページを見せられたそうですが、見てすぐにこれはポータブルオルガンであることに気がついたそうです。ロマネスクの教会彫刻を見て、中世の楽器の復元までしてしまう人なので、彼にとっては一目瞭然のことだったのでしょう。写真からも想像してもらえると思いますが、彼はとても静かな物腰の聡明なすごい集中力のある男性なので、あっという間に楽器を復元したようです。

写真は2004年に計画した日本でのコンサートツアーのもの。大阪のコンサートホールで私が撮影したのですが、ダ・ヴィンチのエスフマートEsfumato煙のかかったような世界が、なんとなく出ていると思います。

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日本での演奏会場も素晴らしく、大塚製薬にスポンサーになっていただき徳島国際博物館のシスティーナチャペルでは、一生忘れられないコンサートを開催することが出来ました。記者会見も復元してあったダ・ヴィンチの実物大の『最後の晩餐』の前で行ったのですが、その時のサウラ氏の感動ようは今でもよく憶えています。

写真はリハーサルの一場面。日本では雅楽の東儀秀樹さんに一緒にコンサートツアーに参加していただきました。本当に無理なことばかりをお願いし続けてしまいました。



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楽器の移動も大変なものでした。中世の楽器がどんどん姿を消してしまった理由のひとつは、その移動の不便さもあると思うのですが、とにかく大きいものがあり、新幹線の駅などでは大騒ぎでした。一番手前の楽器は、古い修道院などに残っている楽器。演奏しているのは、中世音楽で有名なLuis Delgadoルイス・デルガード。彼には録音から何から何までとてもお世話になりました。





なぜ今日こんな昔の話になったかというと、新しくダ・ヴィンチについての展覧会が催されるらしく、そこでの会場音楽として、私たちが制作した『天上の音色』Los sonidos de Leonardo da Vinciを使いたいとの連絡があったのです。そんな訳でこんな思いで話となりましたが、確かにダ・ヴィンチについては、いつ語っても興味深いテーマとなるので、書かせていただきました。CDについて、もっと知りたい方はメッセージをください。

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by angel-chiho | 2011-06-17 07:05 | Art 美術
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