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Museo Zuloaga スロアガ美術館
引き続きセゴビアのお話です。
私は非常に高く評価しているのですが、スペインではちょっと忘れられ気味の芸術家を今日はご紹介します。名前はDaniel Zuloagaダニエル・スロアガ、画家・陶芸家として19世紀から20世紀初期に活躍した人物です。スロアガ家は少なくとも16世紀から、バスク地方で武器を製造していたファミリーで、有名な画家Ignacio Zuloaga イグナシオ・スロアガは彼の甥にあたります。セゴビアには、陶芸家として活躍した彼の工房、また今は姿を消してしまった陶器工場もありました。

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ここがセゴビアにあるダニエル・スロアガの元工房、窯は教会のチャペルのひとつに設置されています。現在でもロマネスク教会に陶芸用の窯を設置したらかなり問題となると思うのですが、当時もきっと色々な意見があったはず。甥のイグナシオも中世の町ペドラサ(セゴビア)の中世の城を修復してアトリエとしましたが、本当にこのファミリーは調べれば調べるほど興味深い人の集まりです。

今回15年振りくらいでここを訪問したのですが、私の記憶の中では教会の方向が違い、記憶と現実がしっくりいかなかったのですが、作品は当時よりもバスクの影響などをよく認識することが出来ました。ネオクラッシック様式からモデルニズムが主流になった時代、古いスタイルと新しいスタイルがうまく統合された上、バスクの特色もとてもよく出している優れたアーティストだと思います。

当時のバスク人は、カスティーリャの素朴で力強い世界に非常に感銘を受けたようで、本当によくカスティーリャの特徴を吸収しているところが見事です。



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カスティーリャでの夏祭りの風景。必ずと言っていいくらい闘牛が登場します。彼の甥のイグナシオは画家になる前に闘牛士を目指したくらいの闘牛好き、彼の絵画には当時の有名闘牛士が登場します。今バスクのサンセバスチャンあたりでは、闘牛をカタルーニャ同様、カスティーリャの文化として中止したいという動きもありますが、このスロアガ家の人達が知ったら、一体どう思うでしょう。闘牛はかなり深くバスク地方にも根付いているスペイン文化のひとつだと思うので、こういう動きは本当に残念です。

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個人的には、この色合いが絶妙なタイルが気に入りました。
テーマは多分セゴビアに実在した宿屋の様子。宿の前にある噴水に、水を汲みにきている人たちの様子が描かれていますが、趣があるだけでなくとても詩的な構図になっていると思います。

おまけに宿の名前がPosada de Conejo 兎の宿。この名前だけでも忘れられない宿になってしまいますよね。昔の人は面白い名前を付けるのが上手い。本当にそう思います。江戸時代の日本人も共通するところがあると思います。

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教会の中は現在何も置いてないので、本当に建造物の様子がよくわかります。素晴らしいロマネスクの彫刻も残っていますし、ところどころにダニエル・スロアガの焼き物もあります。この聖水をいれるPilaピラとよばれる容器の上にも、スロアガの作品が設置してあります。この時代の人は、自分の作品で圧倒せずに昔のものに現代のエッセンスを加えてくれるので感心します。

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こちらがチャペルのひとつに設置された窯。
ロマネスク教会で仕事をするなんて、どんなに素晴らしいインスピレーションが湧いた事か、想像するだけで楽しくなりますが、信心深い昔のスペイン人には、きっと一種の冒涜行為だったと思います。彼が設立した陶器工房は、跡形もないので、きっとそんなことが影響しているのではないかと勝手に思っています。







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2階にある陶器やデッサン、絵画の展示品の中に、こんな面白いバスルームも復元されていました。
タイルのスタイル的には、完全にアラビアンスタイルなのですが、絵は当時のセゴビアの風景。ロバに乗った村人の姿があったり、城や教会が描かれていたり...色がブルーで統一されているところも、とてもモダン。彼の工房がまだ残っていたら、私は絶対我が家のバスルームの一角に彼のタイルをオーダーしたと思います。
なんとも言えない優しいスタイルで、私の好み。

写真からは分かりませんが、実際彼の作品を見ると、非常に繊細で丁寧なことに驚きます。かなり完璧主義者だったのでしょう。現在のスペインタイルからは想像できないような、繊細なタッチで模様が描かれており、大量生産したと思われるタイルなども、線が緻密で正確です。




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素晴らしいデザインの数々。
色々な店や公式の建物に、昔はこのような美しいデザインがふんだんに使われていました。スロアガのタイルは、マドリードのレテイロ公園内にあるPabellon de Cristalの中でも使われているので、セゴビアの工房までは足を運べなくても、マドリードで鑑賞することが可能です。

甥のイグナシオが描いた肖像画も、セゴビアの工房には残っています。
スロアガファンにとっては、感動的な作品です。
大満足のセゴビアの一日でした。




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by angel-chiho | 2011-07-05 06:02 | Castilla カスティーリャ
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