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ルネッサンスの風 2  Grajal de Campo

昨日に続き、グラハルにあるルネッサンス宮殿についてのお話です。
なぜ廃墟の状態がいいかというと、こういう建物の修復では、特に高度なセンスが求められるのですが、どうしても予算や担当者の文化的背景が影響してしまうので、理想的な修復はとても困難な事になります。

ルネッサンスの風 2  Grajal de Campo_c0213220_6203778.jpg当時、最高のセンスを持った建築家が、オーナーと話し合いながら作り上げた世界は、荒廃していても、その面影が残るような状態で観る方が感動的です。

パティオは、ピュアーなイタリアンルネッサンス。オーナーは洗練された人であったことが想像できます。いくら昔はカスティーリャ地方が政治の中心だったとは言っても、首都からここは結構離れています。きっと旅慣れた多くの移動をした人物だったのでしょう。

パティオの中心に古い井戸がありますが、どう考えてもこのスタイルのアイアンがパティオの中心にあったとは思えません。きっと大理石か建物を形成する石灰岩と同じ石で作られた美しい噴水があったのでしょうが、それは時代の流れの中で売り飛ばされてしまったようです。

パティオは綺麗に修復工事が実施されたばかりでした。屋根のリニューアルも済、かなり安全な状態が確保されたようです。柱も綺麗になっていました。回廊をじっくり楽しむために、今度は上階へ移動します。



ルネッサンスの風 2  Grajal de Campo_c0213220_634128.jpg階段の修復はまだですが、奇跡的にこんなに美しい状態で残っており、普通に上がったり下りたりできます。相当石段はすり減っていますが、昔住んでいた人達の足跡が残っているようです。手摺の彫刻は見事なもので、踊り場にはミニチュアライオンのようなものがおり、家を守っています。お殿様の家ですから、犬ではなくライオンです。この時代の彫刻家は、実際にライオンを見た人は少ないので、どうしても犬風なのが特徴。

スペインのルネッサンスは、どちらかというと飾りが多すぎる傾向があるのですが、ここのデザインはシンプルでエレガント。とても上品な印象です。階段は、言うことなしのボリュームとデザインだと思います。面白かったのは、途中2ヶ所に細長い秘密の窓のようなものがあり、使用人が誰が登ってくるのか、しっかりチェックしていたことがわかります。(写真右上にある細長い穴がそれです)田舎の我が家にも、階段にちょうどおなじような目的で小さい窓があるのですが、きっと昔、大きい家では当たり前に、こういうチェックポイントがあったのでしょうね。






ルネッサンスの風 2  Grajal de Campo_c0213220_6485199.jpg2階の部屋のひとつには、16世紀のタラベアタイルもしっかりと残っていました。はげてしまっているところもあったのですが、まぁいい方だと思います。カミロホセ・セラの本の中で、ラ・アルカリアに残る同じようなルネッサンス宮殿のタイルについてのコメントがあったことを思い出しました。

私はこのタイプのタイルを使った、スペインやポルトガルの屋敷のデコレーションが大好きです。どこかイスラムのムードが漂い、空間がタイルのおかげでとても温かくなるように感じます。ブルーとホワイトのデルフトタイプのタイルよりも、やはりアラビックスタイルのものが素敵。



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扉の周りにも、こんな風にタイルが。私も真似したいくらいです。窓の下の部分だけには、絶対にこのスタイルを実施したいと思っています。

このドアの向こうは、細い通路がありちょうど階段の秘密の窓もこの通路にあります。電気がなかったので、途中で探検を諦めましたが、きっと使用人の部屋へと続いていたのではないでしょうか。日本でも西洋でも、ご主人さまが使う空間と、家臣の使うところは違ったので、そんな構造もわかって楽しかったです。

床はオリジナルではないと思います。

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上階からの様子。昔、たくさんの使用人やかっこいい騎士、美しい貴婦人がここに居た頃は、どんなに夢のような世界だったのでしょうか。たくさんの人の姿が脳裏に浮かびます。特に、夏素晴らしいカーテンが掛けられ、夕涼みをしながら音楽などの演奏もあったのでしょうね。
そうそう、暖炉も数か所に残っていました。綺麗な彫刻が黒くなっていました。

次は、下に降りて裏庭の様子をご紹介します。



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ここは、廃墟好きでないと行かないところだと思います。薄暗い支えの柱がある通路を抜けると、裏庭へ出られるのですが、水を貯めた大きな水槽もそのまま残っており、家畜、特に馬小屋だったことが想像できます。
写真は、町の広場へ向かって開いていたガレリアとは違う、家の中のプライベートのガレリアの部分が、崩れてしまった建物の様子です。頑丈なアイアンの窓枠は、今でもがっしりと壁に付いおり、まるで住人を守っているようでした。優れたアイアンは、使い続けられたので、よくこのアイアンは残っていたなぁ~と思います。



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アイアンフェンスを握りしめながら、私は物思いにふけってしまいました。
カスティーリャ地方の北部で、こんな素晴らしいルネッサンス建築をイタリアからインポートし、作り上げた当時の人々は、一体どんな人達だったのでしょう。この広い庭では、どんな花が咲き、野菜やフルーツが栽培されていたのでしょう。限りなく疑問はわいてきますが、こんなところに辿り着くことが出来て、本当にラッキーでした。

裏庭には、大きないちじくの木が今でも元気に育っています。




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実際に訪問しないとわからない部分は沢山あると思いますが、なんとなくカスティーリャの田舎に残るルネッサンス建築の様子が伝わったことを願います。

最後に記念写真。大満足☆



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by angel-chiho | 2011-08-16 06:18 | Castilla カスティーリャ
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