残念ながら今夏は1箇所しか祭壇訪問しておりません。
毎年カスティーリャ地方の夏しかオープンしない教会があり、別のシーズンに行ったら教会の鍵が誰の手元にあるか鍵探しからしなくてはならないこともあり、かなり苦労する可能性があるので、夏はベストの教会訪問シーズンなのです。
ここ数年ルネッサンス期の代表的な祭壇画見学に熱中しているのですが、カスティーリャのルネッサンス期の作品の中でも特に素晴らしいと言われている作品を見に行ってみました。場所はOlivares de Dueroという小さい村。昔はオリーブ畑に囲まれていたのでしょうか。村名は一応オリーブに関連しています。今は有名なワイナリーに囲まれたベストワインの産地です。
教会名はSan Pelayo サン・ペライヨ。外観は非常に地味ですが、内部には偉大な芸術家の作品が祭壇画以外にも数多く残っています。
これだけ大きな作品になると一人の画家の作品ではなく、最低でも優れた画家が三人は関わっていると以前学芸員の方に教えていただきました。これもどう見てもスタイルに違いのある画家が三人、プラス彼らの工房の手が加わっているようです。この祭壇画の代表的な作者はJuan Soredaホワン・ソレダと言われていますが、スペインでもあまり有名ではありませんし、日本ではほとんど聞くことのない名前だと思います。
カスティーリャを旅していてすごいと思うのは、こういうほぼ無名の偉大な画家の多さ。一体当時は何人の画家がこの地域で仕事をしていたのでしょうか。画家以外に彫刻家の存在も不可欠ですから、その数は大変なものだったと思います。こんな何百年も経過しても価値のあるものに投資をすることが、それぞれの町や村の理想でありスタンダードであったということが羨ましいです。
特に興味深いのは一番下にある聖人や旧約聖書の王たちの肖像画ですが、写真の右から2番目の作品はシスティーナ聖堂にあるミケランジェロの作品の構図をそのまま真似しています。この祭壇作りに参加した芸術家の一人Alonso Berrugueteアロンソ・ベルゲッテがイタリアのミケランジェロの工房で修行をしたことが、間違いなことがこのような作品からも確認できます。
システィーナ聖堂は1508年から1512年の間に描かれたそうです。そして、こちらサン・ペライヨの祭壇は1526年頃のものと言われていますので、10年少しでミケランジェロの作品の美しさはデッサンや版画などでスペインの美術界では十分に知られていたことになります。それを知っただけでも今回のこの訪問には価値がありました。
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