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ドン・キホーテ料理とラ・マンチャ
セルバンテスは1605年に『ドン・キホーテ』を出版しています。スペイン語とは興味深い言語で江戸時代の言葉を、現代人が読んでもなんとなく分かるのです。私の印象では江戸時代の文学を読んでも非常に難しくて95%は理解出来ないように思うのですが、スペイン語の場合もちろん内容は深く理解する事は出来ない部分が多いのですが、言葉遣いはかなり分かる部分が多いのです。特に『ドン・キホーテ』の1ページ目はスペイン文学の傑作ページの一つなので、本当に原語で読んで理解することが出来ることが幸福だと思います。

料理の世界はもっと変化が少なくて『ドン・キホーテ』の舞台となるラ・マンチャ地方には、セルバンテスの時代の料理が今でも同じようなスタイルで数多く残っています。伝統料理のレストランに行けば今流にアレンジされているとは言え、基本的に昔のままの料理が堪能できるのです。これはスペインの静物画を観ても確認出来る事実で、全く形姿変わらないお菓子や料理が多々絵に描かれています。それでは本題の『ドン・キホーテ』スタイルの料理をご紹介します。

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まずは前菜のエスカベッチェとオリーブ。漬物が今も昔も変わらないことは日本も同じ。ここではオリーブですが本来ならば小茄子の漬物がラ・マンチャらしい前菜というかおつまみです。当時からラ・マンチャはにんにくと玉ねぎの産地だったらしく、ヴィネガーを使った漬物料理が本当にうまいのです。スペイン伝統料理で重要なエスカベッチェは必ず大量にワインヴィネガーを使うのですが、ラ・マンチャでは野菜の漬け方が上手。そしてジビエのエスカベッチェは芸術的。オリーブの隣の一皿は鳥のエスカベッチェなのですが、上品な酸味が食欲をそそります。あらゆるジビエの肉をエスカベッチェで愉しめるのがスペイン料理の奥深さを表しています。

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2皿目のコロッケ。中身はコシードの残りをリサイクルしたもの。コシードとは最も庶民的な豆料理ですが、たくさん作るのでいつも残り物はコロッケにしたり、『ロパ・ヴィエハ』というリサイク料理に変身します。

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畑にあったほうれん草とジャガイモを季節のキノコで煮込んだスープ。ピメントン入り。コンフォートフードという言葉がピッタリの料理ですが、シンプルなのにそれぞれの野菜の味と香りがしっかりとある嬉しい味の一品。セルバンテスもきっと喜んで食べただろうと思える料理。(これはセルバンテスレシピにはないような品ですが...)

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こちらが前回ご紹介したスペインのオートミール『ガッチャス』。庶民の主食だったような料理で大昔から食べられています。小麦をで作るのが主流ですが、ラ・マンチャではアルモルタという豆を原料にしていたようです。調べるとまるで小豆のような豆なのですが、一度この豆が栽培されている様子を見ないと一体どんな豆なのか明確になりません。

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そして、『ドゥエロス・イ・ケブラントス』というドン・キホーテにも登場する料理。ポークミンチと卵を使いますが、揚げパンにのせてありエネルギーチャージのための料理です。以前、別のレストランでは同じ材料でもスクランブルエッグのようなスタイルでした。訳をすると『悲傷』という名前の料理。ドン・キホーテは騎士のストーリーですが、当時の食文化を知るためにも役立つ本なのです。彼の食卓での色々な語りが非常に深い意味をもっており、ドン・キホーテの食シーンだけでも50回以上。他の登場人物のシーンも含めたらすごい数の食卓が書かれているのです。

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最後にキノコのリゾット。肝心なのはリゾットのトッピングになっている『モルテルエロ』という料理。これは11世紀から記録に残っているというスペイン式のパテ。豚のレバーを使う時もあればジビエの色々なレバーの時もあるそうです。『モルテロ』というすり鉢の中で作る料理なので『モルテルエロ』。スペイン料理はよく調理器具の名前が料理名になってます。個性的でちょっとくせのある味かと思ったのですが、これも優しい味わいで美味しかったです。ラ・マンチャの料理の繊細さを再認識しました。そして、セルバンテスは間違いなくグルメだったはずです。

セルバンテスと料理についてもっと知りたい人は、『ドン・キホーテ』の翻訳家荻内勝之先生の本を読むといいでしょう。私は運よく荻内先生とは一度仕事をご一緒させていただいた事があるのですが、先生は歌舞伎ファミリーに生まれ、その日本歌舞伎界の膨大なボキャブラリーを使って現代人にも分かるように『ドン・キホーテ』を翻訳している偉大な人です。セルバンテスときっと酒場で酔っ払えたような人物なので、『ドン・キホーテの食卓』という先生の本もかなり飛んでいる話が色々出てきますが、この時代の事に興味がある人は楽しめる内容だと思います。

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スペイン料理の世界は知れば知るほど面白くて美味しい世界です。



c0213220_3241139.jpgスペイン料理の本も書くチャンスに恵まれました。伝統的な家庭料理がお好きな方にオススメです。私が美味しいと思った料理で、日本でも簡単に作れるレシピを集めています。アマゾンで好評発売中。1470円
by angel-chiho | 2018-12-10 05:05 | Food Culture 食文化 | Comments(0)
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