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聖なるモラレス Luis de Morales


ここ数年どうしても観たいと思っていたスペイン美術の傑作のひとつをやっと観に行くことが出来ました。

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スペイン美術は宗教と密接な関係にあるのである意味とっつきにくいと思うのですが、段々と聖書がテーマであっても絵を一枚一枚鑑賞していくと、奥深い精神性や神秘的な世界に引き込まれ単に美しい、キレイな作品だけでは満足できなくなっていくように思います。今日ご紹介している『聖なるモラレス』と呼ばれる画家は、ルイス・デ・モラレスという名の16世紀大成功した画家で、エル・グレコと同時代に活躍していました。残る作品の大部分が宗教画ですが、特に聖母マリアを描いた作品は有名です。作品があまりにスピリチュアルで人々の心に響いたので、当時から大成功を納め『聖なるモラレス El Divino Morales』と命名されていたのです。当時のスペイン人が感じたような精神的な感動は、現在人でもしっかりとキャッチできると思います。

写真はポルトガルとスペイン国境の極めて小さい町Arroyo de la Luzに残る彼の傑作。祭壇画20枚がほぼ完ぺきな状態で守られています。モラレスはここに2,3年在住しながら作品を完成させたようですが、ナポレオン軍侵略、宗教的財産没収、内戦など、スペイン美術が過去250年に遭遇した危機的な状況を奇跡的に免れ残っています。

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作品の素晴らしさは写真からも十分伝わると思いますが、21世紀の今でもイルミネーションは不十分。ボランティアの管理人があらゆる機関に働きかけているようですが、困難な事は山のようにあるようです。スペイン各地の名もないような村や町に残る美術品は、今も昔も地元の人の愛情がなかったら絶対に消えてしまっていたことは確かです。文化財は税金で守られるような状態ではまだまだないのです。

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最近、作家、伊集院静さんの本を幾つか読んでいるのですが、スペイン美術について語る本に登場する画家は相変わらずゴヤ、ピカソ、ミロと決まった画家ばかり。時々エル・グレコについて書いている人がいますが、圧倒的に同じ画家ばかりというのが残念でなりません。ありとあらゆるスペイン全国の教会や修道院を巡ってスペイン美術を観ているので、もう少しスペイン美術が日本で浸透しないことが悲しくてなりません。これから世界のトップレベルクオリテティーを持つスペイン美術については、本気で紹介できるように活動しないといけないと、実は最近自覚しました。

この決意はモラレスの祭壇をボランティアで守っているキティン・カサーレスさんのような人に巡り合うとより強いものになります。彼は退職してからずっとこの教会のあらゆる雑用をしながら祭壇画も管理しているそうです。誰一人教会に来る人がいない日も、絵と話ながら仕事をしているそうです。過疎地帯にあるような教会は雨漏りなども頻繁で、誰かがしっかりと管理をしていないと、屋根の下にある美術品はすぐに被害を受けてしまいます。大きい空間であればあるほど、毎日目を光らせている人が必要なのだと思います。

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キリスト教がテーマなのでどうしても敬遠しがちなスペイン美術。でも、一歩踏み込んでみると今も変わらない日本人も共感できるような無言の精神性が隠れています。これだけ偉大な色彩感あふれる絵画が、16世紀スペインの町には存在し、それを当時からどんな形でも守り続けてきた人々がいたのです。それが無料で誰に邪魔されることもなく、当時とほぼ同じような状態で愉しむことが今でも可能です。

ここにたどり着くのは難しいかもしれませんが、一種の巡礼のように作品に辿り着いて観た時の達成感と感動は感慨無量です。スペインにはそんな美術品や偉大な建造物が数多く残っています。一般的な観光ルートとは全く違うものになりますが、深い歴史を感じるためにはそんな旅をすることをお薦めしたいと、最近強く思っています。


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by angel-chiho | 2018-12-21 06:59 | Art 美術 | Comments(0)
ドン・キホーテ料理とラ・マンチャ
セルバンテスは1605年に『ドン・キホーテ』を出版しています。スペイン語とは興味深い言語で江戸時代の言葉を、現代人が読んでもなんとなく分かるのです。私の印象では江戸時代の文学を読んでも非常に難しくて95%は理解出来ないように思うのですが、スペイン語の場合もちろん内容は深く理解する事は出来ない部分が多いのですが、言葉遣いはかなり分かる部分が多いのです。特に『ドン・キホーテ』の1ページ目はスペイン文学の傑作ページの一つなので、本当に原語で読んで理解することが出来ることが幸福だと思います。

料理の世界はもっと変化が少なくて『ドン・キホーテ』の舞台となるラ・マンチャ地方には、セルバンテスの時代の料理が今でも同じようなスタイルで数多く残っています。伝統料理のレストランに行けば今流にアレンジされているとは言え、基本的に昔のままの料理が堪能できるのです。これはスペインの静物画を観ても確認出来る事実で、全く形姿変わらないお菓子や料理が多々絵に描かれています。それでは本題の『ドン・キホーテ』スタイルの料理をご紹介します。

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まずは前菜のエスカベッチェとオリーブ。漬物が今も昔も変わらないことは日本も同じ。ここではオリーブですが本来ならば小茄子の漬物がラ・マンチャらしい前菜というかおつまみです。当時からラ・マンチャはにんにくと玉ねぎの産地だったらしく、ヴィネガーを使った漬物料理が本当にうまいのです。スペイン伝統料理で重要なエスカベッチェは必ず大量にワインヴィネガーを使うのですが、ラ・マンチャでは野菜の漬け方が上手。そしてジビエのエスカベッチェは芸術的。オリーブの隣の一皿は鳥のエスカベッチェなのですが、上品な酸味が食欲をそそります。あらゆるジビエの肉をエスカベッチェで愉しめるのがスペイン料理の奥深さを表しています。

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2皿目のコロッケ。中身はコシードの残りをリサイクルしたもの。コシードとは最も庶民的な豆料理ですが、たくさん作るのでいつも残り物はコロッケにしたり、『ロパ・ヴィエハ』というリサイク料理に変身します。

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畑にあったほうれん草とジャガイモを季節のキノコで煮込んだスープ。ピメントン入り。コンフォートフードという言葉がピッタリの料理ですが、シンプルなのにそれぞれの野菜の味と香りがしっかりとある嬉しい味の一品。セルバンテスもきっと喜んで食べただろうと思える料理。(これはセルバンテスレシピにはないような品ですが...)

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こちらが前回ご紹介したスペインのオートミール『ガッチャス』。庶民の主食だったような料理で大昔から食べられています。小麦をで作るのが主流ですが、ラ・マンチャではアルモルタという豆を原料にしていたようです。調べるとまるで小豆のような豆なのですが、一度この豆が栽培されている様子を見ないと一体どんな豆なのか明確になりません。

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そして、『ドゥエロス・イ・ケブラントス』というドン・キホーテにも登場する料理。ポークミンチと卵を使いますが、揚げパンにのせてありエネルギーチャージのための料理です。以前、別のレストランでは同じ材料でもスクランブルエッグのようなスタイルでした。訳をすると『悲傷』という名前の料理。ドン・キホーテは騎士のストーリーですが、当時の食文化を知るためにも役立つ本なのです。彼の食卓での色々な語りが非常に深い意味をもっており、ドン・キホーテの食シーンだけでも50回以上。他の登場人物のシーンも含めたらすごい数の食卓が書かれているのです。

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最後にキノコのリゾット。肝心なのはリゾットのトッピングになっている『モルテルエロ』という料理。これは11世紀から記録に残っているというスペイン式のパテ。豚のレバーを使う時もあればジビエの色々なレバーの時もあるそうです。『モルテロ』というすり鉢の中で作る料理なので『モルテルエロ』。スペイン料理はよく調理器具の名前が料理名になってます。個性的でちょっとくせのある味かと思ったのですが、これも優しい味わいで美味しかったです。ラ・マンチャの料理の繊細さを再認識しました。そして、セルバンテスは間違いなくグルメだったはずです。

セルバンテスと料理についてもっと知りたい人は、『ドン・キホーテ』の翻訳家荻内勝之先生の本を読むといいでしょう。私は運よく荻内先生とは一度仕事をご一緒させていただいた事があるのですが、先生は歌舞伎ファミリーに生まれ、その日本歌舞伎界の膨大なボキャブラリーを使って現代人にも分かるように『ドン・キホーテ』を翻訳している偉大な人です。セルバンテスときっと酒場で酔っ払えたような人物なので、『ドン・キホーテの食卓』という先生の本もかなり飛んでいる話が色々出てきますが、この時代の事に興味がある人は楽しめる内容だと思います。

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スペイン料理の世界は知れば知るほど面白くて美味しい世界です。



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by angel-chiho | 2018-12-10 05:05 | Food Culture 食文化 | Comments(0)
スペインのオートミール『ガッチャスGachas』
秋も終わりに近づくと暖炉があるバルやレストランで伝統料理が食べたくなります。12月は今年最後の連休があったので、25年振りくらいにラ・マンチャのウクレスという町へ行っていました。別の機会にドン・キホーテ料理については書こうと思うのですが、ラ・マンチャではセルバンテスが1605年に発行した『ドン・キホーテ』の中で登場する当時の色々な料理が今でも楽しめます。今日はそれよりももっと古い『オートミール』のような古代から食べられていたと思われる料理についてご紹介します。

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写真がその『ガッチャス』。まるでソースのような感じですが、材料は小麦粉を使うのが一般的なのですが、ラ・マンチャでは小豆の一種が使われていたそうです。今でもその粉が販売されています。味付けはベーコンやチョリソ、ピメントンがベースになっているので、おふくろの味という感じの料理です。古代から最も庶民的な料理のひとつで、羊飼いの人がこれをきっと焚火で調理し、持ち合わせのパンに塗って食べていたのだろうと想像できます。イタリアのポレンタなどにもつながる料理だそうです。こんな感じのものを毎日食べられたらきっと恵まれた環境にいた人なのだろうと思いますが、食べると優しい味で歴史の重みを感じる味がするので不思議です。

通常写真のようなスタイルで食べるので一人で一人前日本人の私が食べるのは大変なのですが、あるレストランで美味しい食べ方を発見しました。オリーブオイルで揚げたポテトにガッチャスをまるでソースのように掛けて食べる方法です。これは超気に入ってしまったので、今度この料理をマスターしたいと思っています。ベーコンやチョリソの他にやはり自家製スープなどをプラスするとよりコクのある味付けになると思っています。スパイスも重要ですが。

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この写真のようなガッチャスが出来るようになったらレシピアップしますね。スペインの伝統料理の底力を感じさせてくれる料理です。


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by angel-chiho | 2018-12-09 03:40 | Food Culture 食文化 | Comments(0)
幸せな気分になるオリーブ農園でのランチ
11月12月はオリーブの収穫真っ只中。何度もオリーブ農園を訪問します。カサス・デ・ウアルドという優れたメーカーに行くと、よく食べさせてもらうシンプルな野菜料理を紹介します。

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日本ではあまりこういう食べ方はないように思う、まさにてんこ盛りの野菜です。それぞれセパレートして調理し、最後ににんにくのフライを散らしています。そして何よりこのシンプルな料理を美味しくしてくれるのが、上質なエクストラヴァージンオリーブオイルなのです。これは体験した人しか分からない事なのですが、スーパーで買えるような大量生産で透明の容器に入り、どんな状況で搾られたか分からず、どんな保管をされたかも分からない1リットル1000円を切るようなオイルでは、全く同じ結果は得られません。

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スペインではほとんどの料理の基本的な味付けが塩だけで実施されます。プラスされるものと言えばにんにく。この野菜料理にも膨大な量のにんにくが入っていますが、にんにくとオリーブオイルはスペイン人の長寿の鍵だと思います。優れたオリーブオイルは野菜だけでなく食材全般の旨みを引き出す能力があるため、こんな塩味だけで作る料理も目を見張るように美味しく仕上がるのです。
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また野菜の調理は結構時間をかけます。栄養価を考えるときっと長時間の調理は避けるべきなのでしょうが、じっくり炒めたり、煮込んだり、ローストしたりすると野菜の甘みが凝縮されより美味しくなるので、私はこのスペイン式の野菜料理が大好物です。超ご馳走だと思っているので、こういう食卓を見るとワクワクします。

是非、皆様も今度こんな風にじっくりと野菜を塩味だけで上質なエクストラヴァージンオイルと共に調理してみてください。キイポイントはたっぷりオイルを使うこと。日本人の感覚だとおそらく通常の3倍から5倍の量のオイルを使うべきだと思います。オリーブオイルはきめの細かいライトなオイルなので軽く、かなりの量を入れないと足りません。特にこのタイプの野菜料理にはたっぷりお使いください。

おすすめオリーブオイルはこちらの3リットル入りのカサス・デ・ウアルド製造のエクストラヴァージンオイル!
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カサス・デ・ウアルド 3リットルグリーン缶入りエクストラヴァージンオイル、マイルドタイプ。
参考価格 9000円(税別)


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by angel-chiho | 2018-12-06 07:33 | Olive オリーブについて | Comments(0)





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