ビスコッチョは、スペイン語でスポンジケーキのこと。 今日はオリーブオイル農園のファミリーレシピをご紹介します。 アンダルシアにあるモンタベス家とは、もう10年以上のお付き合いになりますが、いつ訪問してもオリーブと共に育まれた豊かさと質の良い人柄に感動します。特に高齢者の人々の頭の良さには驚いているのですが、今年はお母さんのお姉さんアデラさんにも会うチャンスに恵まれました。お母さんのアラセリについては、以前ブログに書いているので、よかったら下のリンク記事をご覧ください。 こちらがアデラ叔母さん。彼女と私は中世の建造物が大好きで、趣味がぴったりと合ってしまったので、年齢の差を感じることなく色々な話が楽しめました。日本訪問の経験もある彼女は、スペインの古典的な女性の良さを全て備えている人でした。今年はコロナ禍から避難してアンダルシアの農園に姉妹で長期滞在しており、子供の頃のことを沢山思い出したと話してくれました。昔唄った歌まで思い出したそうで、そんな歌まで唄って聞かせてくれました。 最初は私の建造物に対する知識は質問攻めでテストされましたが、しっかり合格出来たようで、次の日はご自分の保管している1960年代の文化財を撮影したスライドを譲ってくれるとまでおっしゃり、とても感激の一日でした。昔の写真やスライドは貴重な資料なので、今後農園の中でしっかり保存してくれると思います。 彼女が手に持っているグリーンのビニール袋には、古くなったパンが入っていて、農園滞在中の日課で犬にパンを与えにいくのが楽しくて仕方ないと言っていました。今日ご紹介するビスコッチョは、そんな素敵な女性から伝授されたレシピです。 アデラの魔法のスポンジケーキレシピ 材料: 150g 薄力粉 150g キビ砂糖または黒砂糖 (オリジナルレシピでは普通の砂糖) 10g ベーキングパウダー 4個 卵 125ml エクストラヴァージンオリーブオイル (アーリーハーベストドミヌスがおすすめ) 型に塗るバター 1個分 レモンゼスト 一つまみ フロールデサル (オリジナルレシピは普通の塩) 作り方 1.レモンゼストを準備する。 2.卵黄と卵白を分ける。卵白は塩と共にボールに入れ、しっかりとメレンゲにする。メレンゲが出来上がったら、少しづつ砂糖を足しながら混ぜ続ける。砂糖の次は溶いた卵黄を少しづつ加え、最後にレモンゼストも加える。 3.型にバターを塗り、薄力粉も振っておく。ドライイーストを粉に加える。 4.2のボールに振るいにかけた薄力粉を少しづつ混ぜながら加える。ゆっくりと混ぜる。オリーブオイルも加えて混ぜる。 5.オーブンは170℃に加熱しておく。 6.4を型に流し込み、オーブンで45~50分。焼きあがったら冷まして型から出し、網の上でしっかりと冷まして完成。 ※好みで型に流し込んだ時に少し砂糖を振る。 本当にしっとりとした優しい美味しさのスポンジケーキです。焼いてから4,5日全く固くならずに美味しく食べられました。焼いた日よりも次の日のほうが味わいがずっと良くなります。1種間は問題なく保存できると思います。いくつかこのブログでもスポンジケーキ紹介していますが、有名なパティシエのレシピより、私はこのレシピが簡単で特に気に入ってます。どうぞお試しください。 オリーブについての新書が、家の光協会から2019年2月27日に発売となりました。パワジオ倶楽部・前橋と共に監修した、オリーブをはじめて楽しむ方々におすすめの本です。木の栽培からオリーブの実の漬物の作り方まで紹介しています。オリーブが好きな方必見です。 アマゾンで発売中。1512円 スペイン料理の本も書くチャンスに恵まれました。伝統的な家庭料理がお好きな方にオススメです。私が美味しいと思った料理で、日本でも簡単に作れるレシピを集めています。アマゾンで発売中。1470円 #
by angel-chiho
| 2020-12-12 08:03
| My Kitchen レシピ付き
今日は日本初の西洋医学病院のお話です。
このストーリーは、私が取引をしているオリーブオイルメーカーの方が教えてくれた感動的な史実で、ポルトガルと日本の関係をより特別にしてくれるものでもあります。九州の方はご存知だと思うのですが、日本に西洋医学を導入し、初めての病院を作ったイエズス会員がポルトガル出身のルイス・デ・アルメイダでした。商人として日本に辿り着いたようですが、イエズス会に参加するようになってから、医師としての資格を活用し始めたようです。大分県には立派なアルメイダ病院が、現在でもしっかりとアルメイダの意思を受け継いでいます。 1552年に日本に来訪した時は商人として来日。山口でザビエルの意思を継ぐイエズス会神父コスメ・デ・トーレスと出会い、イエズス会の教えに目覚めたと言われます。2度目の来日が1555年。中国からのシルクビジネスで裕福だった彼は、孤児院を作るようなチャリティも行っています。そして、1556年大名大友宗麟の許可を得て、1557年に大分に西洋医学を施す日本初の病院を設立。病院の建造費はアルメイダの財産が投入されました。病院は患者100名ほどを収容できる規模で、当初アルメイダは外科医、内科医は日本人キリシタンで日本や中国の漢方を用いた内科治療を実施していたそうです。1560年日本でイエズス会が薬剤治療をする事が許されなくなり病院から退きますが、既に大きな名声を得ていたそうです。 私が驚いたのはアルメイダが食事療法も治療に用いていたという事実で、オリーブオイルもその治療の中に入っていたことです。アルメイダの治療法は信仰と深く関わっていたという部分も、カトリックのポルトガルやスペイン人の今でも残る習慣そのものです。Santa casa de Misericordia【憐みの聖なる家】というキリスト教徒が助けあるための互助組織も発足していたそうです。 もっと調べてみないと分からないのですが、アルメイダは元々ユダヤ人でコンベルソと呼ばれるユダヤ教からキリスト教に改宗したファミリーの出身です。ちょうど私がオリーブの仕入れに行く農園の近くに、アルメイダという町があるのですが、スペインとの国境にある町で、もしかしたらユダヤ人弾圧のあった15世紀に、スペインからアルメイダの町にこの一族は逃げたのではないかと想像しています。当時からユダヤ人は医師として優秀だったため、スペイン王家の医師団は全てユダヤ人でした。リスボンで医師としての資格を得たアルメイダの医療は、日本できっと驚くべきものだったでしょう。 アルメイダについて日本語の文献とスペイン語や英語の文献内容が少し違うのですが、病院から退いた後も各地で治療や宣教に携わりながら、商人としてビジネスも続け、利益は惜しみなく病院のため、また資金不足だった教会に寄付をしていたそうです。 1580年マカオで司祭に叙階され、再び日本に戻り宣教活動・医療活動を続けますが、3年後の1583年天草の河内浦で他界したそうです。天草には彼の銅像があるそうです。冒険商人から無償の医師となり、孤児の保護までも遠い日本で行っていたというこの人物の事は、知れば知るほどいつかゆかりの地を巡ってみたくさせられます。 彼が建造した病院は、1587年に薩摩兵によって破壊されてしまいましたが、1969年にアルメイダ病院として復活。ポルトガルの偉大な人物の形跡が数百年経ってまたこのように再建されたことは、ポルトガルやスペインに長く住む私にとっては非常に特別な事ですが、日本で最初にオリーブオイルを治療に登用した人物でもあるので、より親密感を感じ彼の偉業に感銘を受けます。オリーブオイルに対しての思い入れはこれからも強まる一方です。 #
by angel-chiho
| 2020-12-03 08:16
| History 歴史
絵画のジャンルの中に【静物画】=【Still Life】と呼ばれるものがありますが、英語からの直訳で静物画になるのは当然だと思うのですが、フランス語の場合【Nature morte】死んだ自然と表現され、スペイン語では【Bodegon】または【Naturaleza muerta】と呼ばれ、ワインセラー、またはフランスのように死んだ自然を意味しています。
静物画というと、日本では印象派の様々な食卓の絵や、ゴッホのひまわりなどが有名なので、スペインのような神秘的な静物画の世界は、やはり【ボデゴン】と正しいジャンル名で識別しないと、この世界の価値が分からないかもしれません。 私は食に関する仕事をしているので、特にボデゴンに興味を持っていますが、スペインのボデゴンは17世紀神秘主義に影響されており、代表的な作品には、息を飲むような感動とスペインの精神世界を垣間見ることが出来ます。 最高傑作は、サンチェス・コタンという修道士であり画家であった人物の作品だと思います。17世紀スペインは【黄金世紀】と呼ばれる時代を迎え、文学、美術、音楽すべての芸術文化隆盛期として知られています。サンチェス・コタンの絵の中では、神秘派や本質主義の精神が表現されています。 写真@museodeprado 左側はカリンで、この作品ではちょうど10月11月の食材が選ばれて描かれています。先ほども言ったように、息をのむという表現がぴったりの作品で、この作品の前に立つと時間が止まっているというか、時間までもが宙ぶらりんとなり宇宙的なものを感じます。恐らくこれがスペインの神秘主義的な感覚なのだと思います。サンチェス・コタンはボデゴン以外にも、色々な宗教画を描いていますが、可愛らしい印象の作品が多く、このように鋭い感覚を感じる作品はボデゴンでしかありません。もうひとりボデゴンの名人と言えるのが、フランシスコ・デ・スルバラン。彼は宗教画も素晴らしく、個人的に最も敬愛する画家のひとりですが、ボデゴンの中にやはりコタンと同じように、画家の精神世界が封じ込められています。 スルバランの質感を写真で感じるのはとても困難なのですが、精密に描かれた器や水、シルバー、バラ、ひとつひとつに本質の美しさや価値が表現されています。ずっと見惚れていたくなる一枚です。 スペインのこれらのボデゴン=静物画の世界は深く、探れば探るほどハマっていく世界なのですが、画家中の画家と言われるベラスケスもやはりこのボデゴンの世界を極めている天才のひとりで、彼の場合は作品の随所にボデゴンがあります。 この作品は【セビリャの水売り】というタイトルですが、ミステリアスな作品で色々な解釈がされています。ピカレスク小説の主人公が描いてあるという説もあれば、人間が年老いていく3つの段階が描いてあるとか。私が興味を持っているのは、静物画の部分で釉薬の掛かっていない陶器、釉薬が掛けてある陶器、そして最終的にクリスタルグラスと展開していく器のテクスチャーの違いと、特に透明な水の入ったグラスの高級感に感動します。この雰囲気の中にあるからこそ、クリスタルの美しさが極まっています。 当時クリアーな水を飲むことは贅沢だったのでしょう。わざわざクリスタルで飲ませるという行為にも感動しますが、グラスの中にイチジクが1個入っているのです。こんな風にイチジクを入れることで、水をより香り高い上等なものにしているのですが、17世紀前半のセビリャでこんな風に水が楽しまれていたことには驚かされました。今ならレモンのスライスとか思いつきますが、イチジクというのが21世紀の今でもシンプルにお洒落です。こんな渋い絵もスペイン黄金世紀の輝きがしっかりと隠れているのです。 知れば知るほどベラスケスは虜になりますが、ここ数年何枚も彼の絵は発見されており、しばらく前にベラスケス唯一のボデゴンも発見されました。 最後にもう一枚ベラスケスの絵をご紹介しますが、テーブルの上に幾つかの瓶があります。仕事上私が楽しんでいるのは、こういうシーンで、グリーンの瓶はアルクーサと呼ばれるオリーブオイル用の瓶なのです。ボデゴンには様々な食のシーンが季節別に表現されることもあります。オリーブオイルの容器は結構登場するのです。料理も昔から全く変わっていないものがとても多く、ボデゴン調査はこれからも益々続行したいと思っているので、また機会があったらご紹介します。スペイン絵画を楽しむチャンスがあったら、是非ボデゴンにも注目してみてください。 #
by angel-chiho
| 2020-11-19 01:53
| Art 美術
グラス越しに見ても本当に美しいとしか言えないオリーブオイルですが、こうなるまでには大変な手間と苦労があるのです。 私も数年前から種抜きの他社のオリーブオイルは試しましたが、種独特の香りと味わいがなくなってしまうと、骨格がなくなったような味のオイルになってしまうために、苦みはないのですがつまらないオイルという印象を受けていました。多くの専門家がオリーブオイルの特徴がなくなってしまうというコメントもしていました。確かに、搾油する早摘みの高級オイルから全ての種を抜いてしまったら、ボケたオイルになってしまうようにも思います。ただ、ここは世界一を目指すカサスデウアルド農園なので、色々な試みをして最高の味わいを探求しています。単純に全ての種を抜くようなことはしないはずです。 今のところ、この種抜きの技術を一番活用しているのが【レセルバデファミリア】という最高級オイルです。このオイルは、早摘みで農園内の最高の状態のオリーブを厳選してつくられます。その他のオイルよりも早く収穫され搾油される5000本の限定品です。そのオイル作りに、この種抜き工程は実際に使われており、今年も素晴らしいエメラルドグリーンのオイルが完成しています。果実を厳選し、種もある程度抜き、最終的にブレンドすることで完成するオイルですが、益々工程が複雑になっていることを理解していただけたと思います。 最高級オイルはアーリーハーベストと言って早摘みです。完全にグリーンの実を収穫しますが、収穫時期が早いと言う事は気温もそれなりに高い事を意味しています。10月と11月では相当気温差があります。この装置でまだ暑い時期に収穫されたオリーブの実は、圧搾される前に冷却され、攪拌時の温度が6度くらい下げる事が出来るそうです。優れたオイルを作るためには、温度コントロールが最も重要な事のひとつなのですが、これでより高品質なオイルを作ることが出来るようになりました。しかも、この装置を利用した試みは、カサスデウアルドが世界発です。ここでも革新、革新と歩み続けている様子が分かっていただけると思います。 ここから先のブレンディングなどについては、香水の調香師のようなものですから、専門家の鼻と味覚そして感性に関わってきます。来年こそ100点満点をフロスオレイというガイドブックでももらえるのではないかと思いながら、今年も見学をしてまいりました。新年度オイルについての詳細も次回お知らせしたいと思います。 #
by angel-chiho
| 2020-11-09 04:28
| Olive オリーブについて
オリーブ農園訪問で一番楽しみなのは、農園で食べている食事を知る事です。現在私が関わっている農園は、イベリア半島に4か所ありますが、テーブルオリーブ農園も加えると5か所あります。それぞれ違う地方にあるので、同じオリーブを栽培していても食べるものはかなり違い、様々な料理に出会う事ができます。
オリーブ農園の簡単な料理は、シンプルさの中においしさが隠れていて、目玉焼きにもフロールデサルのような結晶状の塩とワインヴィネガーを少々振る食べ方もあります。私にとっては、これで目玉焼きのレパートリーもかなり増えました。簡単過ぎる料理ほど、食材の味がもろに出るので、それぞれの素材の質が問われます。上質なオリーブオイルと卵、野菜、どれもが最高な品質なので、信じられないほどおいしくなります。 真っ先にテーブルオリーブ=新漬けオリーブを注文しました。コルネスエロというハエンを代表するオリーブの品種があるのですが、この新漬けが病みつきになるほど美味しいのです。 ハエンで作られているフラントイオはフルーティーですが、イタリア産のものとはかなり味わいが違います。一瞬ピクアルの香りも感じました。 次にもうひとつサラダをいただきましたが、パートリッジという野鳥を使ったサラダです。ハエンはジビエが豊富な地域でもあり、山間部に行くと必ず鹿や猪の料理が登場します。アンダルシアらしいサラダでした。 以上が今回のフードレパートリーです。デザートはオリーブオイルに関係していなかったので、撮り忘れてしまいましたが、おいしいチーズケーキやアイスクリームをいただきました。
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by angel-chiho
| 2020-10-28 07:36
| Olive オリーブについて
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25年以上に及ぶスペインでの生活で発見した私なりの美しくてシンプルな伝統と歴史を感じさせてくれるスペインを紹介中。
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